yamamotoh011203  「地方自治論」レポート

「世田谷区の高齢者サービスの施策」 k980148 山本 弘子              

1、はじめに

現在、日本の政治形態は、2つに分かれている。一つは、国会・内閣など国政を行う、立法機関や行政機関で、もう一つは、立法・行政機能を持っている地方自治体を中心とした地方政治、すなわち地政である。この地方自治体にも、普通地方公共団体と特別地方公共団体の2つがある。普通地方公共団体は、都道府県・市町村の自治体であり、特別地方公共団体は、東京23区に表されるように、区を指す。これらの政治・財政・行政のあり方等を規定している法に、地方自治法がある。この法は、平成13711日に最終改正がなされている。これによって、各地方自治体は、もっと住民に身近になる、と言われている。しかしながら、どのように身近になったのか、具体的なことが分からない。加えて、社会の身近な問題としては、「ゴミ問題」「高齢者介護の問題」「教育の問題」「医療の問題」等、様々な問題がある中、人口の高齢化問題が叫ばれてから、久しくなっている。そこで、世田谷区の行政サービスの中で、高齢者サービスの施策について、調べてみることとした。

 

2、世田谷区を選んだ理由

世田谷区は東京23区の中で、人口が約78万人と最も多く、面積は約58kmで二番目に大きい。高齢者においては、65歳以上の人口は、約12万人である。(http://www.mayors.or.jp/ 全国市長会より引用)

このため、住民から、区に対する行政サービスの需要・要望が高いのではないか、また、都内のため、特徴ある行政サイドとしての仕事もあるのではないか、と考えた。

 

3、地方自治体が行政施策(行政サービス)として取り組めるもの

地方自治法に、それに関する条文がある。

地方自治法

第一条の二  地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。

 国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect 地方自治法 より引用)

 

ここでの特徴は、地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることが基本であり、地域における行政を自主的・総合的に実施することと、国は、住民に身近な行政は、できる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、適切に役割分担をすることである。この地方自治法の規定でみる限り、以前よりも、地方自治体は地方行政に関して、主体的に行動できる機会が大きくなっている。すなわち、国からの影響が少なくなり、本来、独自性のあるべき、地方自治のあり方に一歩進んだ形である。

 

4、世田谷区の高齢者サービスの施策・考察

  痴呆性高齢者専門相談を区内5ヵ所の保健福祉センターで受け付けている。これは予約制である。

相談場所

問い合わせ先

相談受付時間

世田谷保健福祉センター

電話 5432-1111()

奇数月第1月曜日 1300から1400

北沢保健福祉センター

電話 3323-1731

13金曜日 1330から1500

玉川保健福祉センター

電話 3702-1948

24木曜日 1330から1430

砧保健福祉センター

電話 3483-3161

24火曜日 1330から1530

烏山保健福祉センター

電話 3308-8228

3火曜日 1330から1500

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/ 世田谷便利帳 健康・医療より引用)

 

地域福利権利擁護事業(社会福祉協議会が中心となる)

痴呆、知的障害、精神障害で判断能力が不十分な人に、福祉サービスの利用及びその手続きの代行、日常の金銭管理、書類等の預かりサービスの問い合わせ、相談を行っている。

 

車椅子と歩行器の貸し出し(保健福祉センター保健福祉課、各出張所)

下肢障害及び疾病のため、車椅子や歩行器を一時的に必要とする場合、2ヶ月以内の期間において、無料で貸与している。

 

在宅介護支援センター

在宅で援護が必要な高齢者や、その家族などの相談を無料で受け付ける。

内容 介護についての相談、福祉用具・用品の紹介、区の保険福祉サービスの紹介及び一部サービスの申請代行、介護保険の申請受け付け等

相談受付時間 
月から金曜日 9時00分から17時00分(祝日、年末年始を除く)
※ただし、一部の在宅介護支援センター(世田谷・北沢・中町・成城・芦花)では、月から金曜日 9時00分から18時00分(祝日、年末年始を除く)
土・日・祝日(年末年始除く) 9時00分から17時00分(祝日、年末年始を除く)

 

都内共通入浴券の交付(在宅サービス課高齢者在宅サービスが行う)

65歳以上の一人暮らしの高齢者及び、高齢者のみの世帯の人に対して行う。

自宅に風呂のない世帯 年60枚まで

自宅に風呂のある世帯 年30枚まで

 

敬老入浴デー

60歳以上の高齢者を対象とする。月1回 区内公衆浴場を、午後2時から午後4時までの間、無料で利用できる。

 

おはよう訪問(保健福祉センター保健福祉課が行う)

乳酸菌飲料の配達を行う。費用は無料。毎日訪問する。(土・日曜日・祝日を除く)これは70歳以上のひとりぐらしの高齢者の安否の確認も兼ねている。

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/ 世田谷便利帳 お年寄りの方へ より参照)

他、介護保険を踏まえた、様々な高齢者サービスがある。ここでは主に、自己負担が無料のものを上にあげて見た。その根拠は、大部分の高齢者は、主に生活費を年金か、自己の預貯金などの財産に頼っていることにより、日常の暮らしでも節約をしようと試み、費用がかかるものは、好まれないのではないか、と考えたことによる。

 

5、高齢者サービスに関する法・及び条例

介護保険法が、平成91217日に成立したことに伴い、世田谷区では、世田谷区介護保険条例が、平成12年に成立した。これは、主に、世田谷区介護認定審査会、保険料、相談・苦情の解決のための体制、運営協議、罰則について定めたもので、介護保険法を地域版にしたような形に作られている。これには、高齢者サービスについての規定がない。それらに関する規定は、世田谷区地域保健福祉推進条例 第4条にある。ちなみに、この条例が成立したのは、平成8313日である。介護保険法の成立よりも約16ヶ月余り早いことになる。そして、何回かの改正を受けて、(最終改正 平成13618日)今日に至っている。これらの経過から、考察していくと、高齢者介護の問題が、国に取り上げられる前に、世田谷区では身近であったことが、推測できる。それゆえに、各地方自治体の方が、その地域の問題を反映しやすく、行動し易い、と言われるゆえんであろう。もちろん、その地域の住民の意識も重要になってくる。

 

世田谷区地域保健福祉推進条例

(区の責務)

第4条 区は、基本理念及び次章の基本方針に基づき、次に掲げる保健福祉サービス等が真に実施されるよう、地域保健福祉を推進する責務を有する。

() 利用者の主体性を尊重した保健福祉サービス

() 区民の自立した生活を支える保健福祉サービス

() 区民が信頼して利用できる保健福祉サービス

() 区民の需要に即応する保健福祉サービス

() 身近な地域で利用できる保健福祉サービス

一部改正〔平成12年条例40号〕

ここでの保健福祉サービスは、第2条 定義により、区の保健福祉に関する役務、給付、措置その他のサービスをいう。(http://www.city.setagaya.tokyo.jp/ 世田谷区例規類集 より引用)

 

6、世田谷区の財政事情・考察

平成12年度世田谷区決算概要と当初予算概要・補正予算概要によると、歳入の面は、特別区税9928800万円、特別区交付金2826400万円、国庫支出金1477600万円、都支出金1131100万円、諸収入2204800万円、特別区債101200万円が大きく占めている。特に、国と都から移行される資金に限ってみると、全体の約3割を占めており、残りを特別区税、諸収入、特別区債等で賄っている。歳出の面では、民生費7073000万円、職員費5328900万円、土木費2796200万円、総務費198200万円が約7割を占めている。特に多いのが、高齢者サービス等、福祉関係の支出の民生費であり、介護保険制度に基づく、介護の基盤の整備経費により、支出が増加した。ちなみに、保険関係(国民健康保険、介護保険)医療関係(老人保健)は、補正予算を組んでいる。

各款別構成比

7、おわりに

  以上、世田谷区で行われている高齢者サービスの施策について、法・条例面、財政面についてリポートしてみた。高齢者及びその介護者に対して、行政サイドでできる緻密なサービスがある反面、職員費等、人件費の費用がかかることを感じた。区では、職員費の増加に対しては、期末手当の支給月数の削減や職員定数の削減を行って対応しており、そして、必要なサービスの供給に対しては、臨時職員を「広報 せたがや」等で募集し、ボランティア等を活用している。誰でも、年をとり、高齢者になり、加齢による老化現象は避けられない。高齢になっても、「健康な、質の高い、生きがいのある生活レベル」を維持するためには、各個人の健康への関心、健康管理及び維持への努力と、医療・福祉の連携が必要である。そのための財源については、高齢者サービスも含めて、福祉の原点の問題を「相互扶助」と考えると、スウェーデン等の北欧諸国のように「高福祉・高負担」でよいのか、それとも「低福祉・低負担」でよいのか、と論議される。世田谷区は、その問題に関して、「高福祉・低負担」を、どのように実現していくか、現在、試行中である。

 

参考・引用文献

http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect 地方自治法 介護保険法

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/ 世田谷便利帳 決算概要 当初予算概要 補正予算概要 世田谷区例規類集

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/kugikai/ 世田谷区議会

http://www.mayors.or.jp/ 全国市長会